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東京高等裁判所 昭和31年(く)42号 決定

抗告人 少年K

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告の趣意は、抗告人は、同人に対する虞犯保護事件について、昭和三十一年五月十八日、横浜家庭裁判所で、中等少年院に送致する旨の決定を受けたが、該決定は、同日の審判期日に、保護者を立会わせないで、裁判所が勝手にきめたものであつて、納得できないから、右決定を取り消した上、審判のやりなおしを求めるため、本件抗告に及んだというにある。

よつて案ずるに、一件記録に徴するときは、抗告人(少年)に対する虞犯保護事件につき、昭和三十一年五月十八日、横浜家庭裁判所において、保護者の立会なくして審判が行われ、即日、抗告人を中等少年院に送致する旨の決定が言い渡されたこと、及び右保護者に対しては、同年同月十四日附をもつて、同年同月十八日の審判期日に出頭されたい旨の審判期日呼出状が発送されたけれども、該呼出状は、受取人あて所に尋ね当らない旨の理由によつて返送され、不送達に終つた事実が認めえられるのであるから、原裁判所における右審判手続には、少年審判規則第二十五条第二項の規定に違反した違法があるものといわなければならない。しかしながら、右少年審判規則第二十五条第二項の規定は、元来少年保護の立場から、一定の場合に、国家機関において、保護者の親権を代行する結果を来すべき保護処分を必要とするような場合のあることを予想し、保護者又は附添人をして、意見を述べる機会を与えようとする趣旨で設けられたものと解されるところ、記録によれば、本件抗告人の保護者である片寄マツエに対する原裁判所の審判期日呼出状は、一応適法に発送されていることが認めえられる上に、同人の司法巡査本吉憲次に対する供述調書に徴するときは、同保護者においては、少年たる抗告人の保護監督に窮した結果、同人を国家の矯正保護施設に収容の上、矯正教育を施されるよう希望していることが窮われるのであるから、原裁判所の審判手続に関する前示の法令違反は、ひつきよう、原決定に影響を及ぼさないものとみるのが相当であるというべく、なお、記録を精査検討してみても、原決定に重大な事実の誤認、又は処分の著しい不当があるものとも考えられないから、原決定は正当であつて、本件抗告はその理由がない。

よつて、少年審判規則第五十条、少年法第三十三条第一項後段に則り、本件抗告を棄却することとして、主文のとおり決定する。

(裁判長判事 中西要一 判事 山田要治 判事 石井謹吾)

抗告の趣旨

十八日の日に審判がありましたが、保護者が立会つていないのに裁判所は勝手に決めたことが僕としては納得できないから審判のやりなおしをお願いします。

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